前回、お歯黒の歴史についてお話ししました。
今回は、お歯黒の驚くべきむし歯予防効果についてお伝えします。
大正時代には、ある一つの言い伝えがありました。
それは「お歯黒の女性には歯医者はいらない」というものです。
実際に、お歯黒の歯にはむし歯や歯槽膿漏が少なく、歯の痛みも起こりにくかったことが分かっています。
なぜ、お歯黒にはこのような効果があるのでしょうか?
それは、お歯黒に使用されていた材料がキーポイントになっています。
お歯黒の材料は、約60%のタンニンが含まれている「五倍子粉」と鉄漿水(酢酸第一鉄溶液)です。
タンニンには、歯や歯肉のタンパク質を凝固させ、細菌の攻撃から守る働きがあります。
また、鉄漿水の主成分である第一鉄イオンには、ハイドロキシアパタイトを強化し耐酸性を向上させる働きがあります。
ハイドロキシアパタイトは、歯のエナメル質の97%、象牙質の70%に含まれています。
つまり、歯の重要な構成成分ということです。
さらに未反応の第一鉄イオンは、呼吸で取り込まれた酸素とくっつき第二鉄イオンになります。
その結果、未反応のタンニンと結合して黒い耐溶性のタンニン酸第二鉄となるのです。
タンニン酸第二鉄が歯の表面をおおうことで、細菌の接触を予防する効果があると言われています。
また、お歯黒の材料は歯垢を綺麗に取り除かないと付けることができません。
そのため、女性たちは楊子を使って歯の汚れを丁寧に落としていました。
このように定期的に歯磨きをしていたため、むし歯予防に繋がっていたということになります。
お歯黒の有効成分は現在歯科業界で注目されており、製品開発が進んでいます。
歯に接着するセメントに加えて、治療後の歯がむし歯になりにくいように活用されているのです。
ちなみに無機質と有機質の両面から歯を守るお歯黒の成分は、当時欧米では発見されていませんでした。
日本人が奈良時代から予防歯科材料を開発していたのは、誇りに思うべきです。
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